2023年表彰の論文賞受賞決定のお知らせ(2022/09/30)
俵論文賞、澤村論文賞、ギマラエス賞について:
2021年の「鉄と鋼」、「ISIJ International」に掲載された論文を対象に選考し、2023年に表彰する論文賞の受賞者が決定いたしました。
卓越論文賞について:
「鉄と鋼」または「ISIJ International」に掲載された論文のうち、原則として前10±1カ年にわたって学術上、技術上最も有益で影響力のある論文の著者に授与されます。2019年に新設されました。
俵論文賞(4件)
- XRDおよびXAFSによる多成分カルシウムフェライトの還元挙動のその場観察
鉄と鋼, Vol.107 (2021), No.6, pp.517-526
村尾玲子(日本製鉄), 木村正雄(高エネルギー加速器研究機構, 総合研究大学院大)
https://doi.org/10.2355/tetsutohagane.TETSU-2020-077
近年,鉄鉱石中の脈石濃度が上昇している。そのため、今後、脈石を多く含む鉄鉱石を用いて被還元性と強度を保持した焼結鉱を製造する必要がある。このような焼結鉱を製造するためには、その組織や結晶構造が重要となる。焼結鉱は,鉄鉱石粒子,融着層,空孔,亀裂から構成されている。融着層は融液から析出した擬二元系カルシウムフェライト,多成分カルシウムフェライト,CaO-SiO2系ガラスおよびこれらの固溶体などの複数相が含まれている。中でも多成分カルシウムフェライトの結晶構造は、スピネルとパイロキシンの積層構造からなり、その種類は多数(SFCA, SFCA-I, SFCA-II, SFCA-III等)あり、完全には明らかにされていない構造もある。また、その還元反応の素反応もわかっていないことが多い。
本論文では、複雑な構造を有する多成分カルシウムフェライトの還元挙動を、熱分析を用いた酸素脱離過程の評価,X線回折法による中間生成相の同定,X線吸収分光法によるFe,Caの局所構造変化の解析によって、定量的に評価した。また、上記in-situ測定法を用いてSFCA相のような複雑な結晶構造を有する複合酸化物の還元反応の素反応を明らかにした。
以上、本論文で得られた知見によって複雑な構造を有する焼結鉱の還元反応の素反応が詳細に明らかになり、学術的・工業的にも波及効果が大きく、俵論文賞にふさわしいと判断できる。
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- 二クロム酸カリウム滴定のための窒素雰囲気下における定量的な鉄の還元
鉄と鋼, Vol.107 (2021), No.7, pp.566-576
門脇優人(宇都宮大), 柳原木綿子(日鉄テクノロジー), 稲川有徳, 上原伸夫(宇都宮大)
https://doi.org/10.2355/tetsutohagane.TETSU-2021-019
鉄鉱石中に含まれる主成分の鉄を全定量するJISM8212やISO9507で規定されている方法は、鉄(III)を塩化スズ(II)で還元して過剰の塩化チタンを加えてすべて鉄(II)とした後、余剰のチタン(III)を二クロム酸カリウムで処理し、還元完了点を指示薬インディゴカルミンの変色で判断する。そのため、経験と熟練が必要である。著者らは、鉄鉱石分解液中に含まれる化学種が起こす酸化還元反応を電位測定や吸光光度法により検討した。この新規解析法により、現状分析法ではスズの酸化還元反応が遅いこと、銅やバナジウムなどの共存が二クロム酸カリウム滴定の誤差要因となることを定量的に示すことで、指示薬インディゴカルミンの変色による判断の問題点を明らかにした。さらに、還元剤の種類ごとの誤差要因を精緻に分離して評価し、酸化チタン添加法による回避策も提案した。これらの結果は、新規性や技術上から高く評価される。鉄鉱石中に含まれる主成分の鉄を精度良く定量することは、原料品質を取り扱う上で重要であり、分析技術の発展に貢献する論文である。
以上のように、本論文で得られた知見は学術的にも技術的にも価値が高いため、俵論文賞に相応しいと判断できる。
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- リバーパターンとテアリッジに基づく脆性破壊起点の自動探索手法の開発
鉄と鋼, Vol.107 (2021), No.11, pp.934-943
滑川哲也,星野 学,藤岡政明,白幡浩幸(日本製鉄)
https://doi.org/10.2355/tetsutohagane.TETSU-2021-025
本論文は、厚鋼板における脆性破壊を対象として、客観的かつ自動的に破壊起点を同定する技術の確立を目的としたものである。通常、金属材料の破壊の起点は、脆性破壊に伴って形成するリバーパターンならびにティアリッジを視認し、これらの伝播経路を遡ることで決定されるが、その実施には高い熟練度が求められると同時に言語化しにくい技法となっている。これに対して、本論文では、画像処理とセルラ・オートマトン法を用いて、上記の技法を機械的に再現するものである。とくに、セルラ・オートマトン法にポテンシャル場を想定するとともに伝播経路の幾何学的制約を加えた点は独創的であり、これによって破壊起点を一意に決定されることを明らかにした。さらに、機械学習を前段階として活用し、脆性破面を示す組織写真を選択的に抽出することにより、観察倍率に依存した起点決定の誤差を大きく低減できる可能性を示した。上記の技術は、厚鋼板に限らず、金属材料の脆性破壊に直ちに応用できるものと期待される。
以上、本論文で得られた知見は、汎用的構造材料である鉄鋼材料の信頼性を支える基盤技術として利用することが可能であり、その成果は学術・技術面で高く評価できることから、俵論文賞に相応しいと判断できる。
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- 内部・外部水素によるNi基超合金718の延性低下機構とその温度依存性
鉄と鋼, Vol.107 (2021), No.11, pp.955-967
野口耕平, 小川祐平, 高桑 脩, 松永久生(九州大)
https://doi.org/10.2355/tetsutohagane.TETSU-2021-056
Ni基超合金718は、強度特性に対する水素の影響が大きく、γ’相などの析出の形態や種類、固溶した水素の分布や量などが水素脆化感受性に影響を及ぼすと考えられてきた。しかし、これまで試験条件などが統一されておらず、脆化現象の包括的な理解には至っていなかった。本論文は、Ni基超合金718に対して水素供給方法の異なる引張試験を-196℃~300℃で実施し、延性低下挙動と破壊形態の温度依存性を系統的に検討したものである。
まず、延性低下に対する温度依存性を検討し、水素チャージ材を用いた内部水素試験では、温度の上昇および低下に伴い、延性低下量は回復するのに対し、水素ガス環境中で行う外部水素試験では、温度上昇に伴って延性は単調に低下する傾向を見出した。この強度特性の差は、水素の侵入度や試験温度に依存した水素誘起き裂の発生箇所や進展の違いによるものである。特に、内部水素試験の場合、試験温度-40〜300℃では、焼鈍双晶界面またはすべり面近傍での局所的高転位密度領域に水素が拡散・集積が、-196℃では結晶粒界での水素の偏析がき裂の発生の主要因となることを明らかにしている。水素が予め存在する場合と表面から侵入する場合に明確に分けて検討、議論することで、複雑な水素脆化現象の理解や従来の理論を深化させている。
本論文で得られた知見は、鉄鋼材料の水素脆化機構解明に資することが期待でき、学術面、技術面で高く評価できる。したがって、俵論文賞に相応しいと判断できる。
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澤村論文賞(6件)
- Flow Stress of Duplex Stainless Steel by Inverse Analysis with Dynamic Recovery and Recrystallization Model
ISIJ International, Vol.61 (2021), No.1, pp.280-291
Kyunghyun KIM(東京大), Hyung-Won PARK(小松大), Sheng DING, Hyeon-Woo PARK, 柳本 潤(東京大)
https://doi.org/10.2355/isijinternational.ISIJINT-2020-122
鋼材の熱間加工工程において、加工後の寸法精度や製造コスト削減のために、被加工材の流動応力を正確に予測することが重要である。通常、所望の寸法精度を得るためには複数回にわたる加工を連続して実施するが、ヒートロス低減や加工効率アップのため、できるだけ短時間での連続加工を志向する。このとき、材料は前加工の影響を受け、材料内では加工硬化・回復・再結晶など、複雑なメタラジー現象が起こり、その流動応力予測は非常に困難であった。
本論文では、二相ステンレス鋼というより複雑な系を対象として、各相における上記メタラジー現象をそれぞれモデル化・パラメータ同定に取り組み、二相ステンレス鋼の流動応力を正確に予測することに成功している。実験および逆解析手法の基盤については、著者らが先に開発したものであり、今回は二相ステンレス鋼のγ相およびα相それぞれの各応力を同定し、混合則を利用して複合組織の流動応力に拡張している。すなわち、従来著者らが開発した手法が、複相組織へも拡張であるということを初めて示した。
以上のように、本論文では二相ステンレス鋼の複雑なメタラジー現象をモデル化し、実際の実験結果を再現するという卓越した成果をあげており、結果自体の工業的有用性に加え、手法の発展性による学術的価値が高いものであり、本論文は澤村論文賞にふさわしいものであると判断できる。
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- Effect of Carbon Concentration in Austenite on Cementite Morphology in Pearlite
ISIJ International, Vol.61 (2021), No.1, pp.372-379
安田忠央, 中田伸生(東京工業大)
https://doi.org/10.2355/isijinternational.ISIJINT-2020-325
共析鋼では、(セメンタイト+フェライト)ラメラ組織からなるラメラパーライトが生成するのに対して、共析組成から炭素濃度が低下すると、セメンタイト粒子が分散した疑似パーライトが生成することが知られている。この疑似パーライト生成は、フェライトとセメンタイトの非協調成長によって生じるものと考えられてきたが、その生成条件や生成機構は必ずしも明確ではなかった。
本論文では、初析フェライト生成を利用してオーステナイト中の炭素濃度を系統的に変化させる巧妙な実験により、低炭素条件で生成する疑似パーライトと高炭素条件で生成するラメラパーライトの遷移炭素組成を明確にしている。さらに、フェライト成長とラメラパーライト成長の競合反応をモデル化し、フェライトとセメンタイトが協調成長できなくなる条件を導出し、実験で見られた遷移炭素組成を説明することに成功している。また、力学特性についても、ラメラパーライトは疑似パーライトよりも焼鈍による軟化が遅いことを示し、それがラメラ組織によるオストワルド成長への拘束によることを指摘している。
以上のように本論文は、これまで不明確であった疑似パーライトの生成条件、生成機構を実験と理論両面から解き明かし、学術的にも工学的にも価値の高いものであるため、澤村論文賞にふさわしいと判断できる。
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- Phase Relationship and Activities of Components in CaO–SiO2–Cr2O3 Ternary System at 1573 K
ISIJ International, Vol.61 (2021), No.5, pp.1404-1411
岩橋広大, 橋本修志, 山内遼平, 齋藤啓次郎, 長谷川将克(京都大)
https://doi.org/10.2355/isijinternational.ISIJINT-2020-752
高クロム含有特殊鋼の脱炭処理において、クロムは容易に酸化ロスされやすいため、環境負荷や製造コストが課題であった。この酸化ロスを抑制するためには、クロム酸化物を含む精錬スラグの相平衡関係、および、スラグを構成する主要酸化物の活量、を正確に把握することが不可欠である。しかし、実操業条件へ適用できる信頼性の高い熱化学データは、これまで報告されていなかった。
本論文では、1573K、Ar+H2+CO混合ガス雰囲気において、CaO–SiO2–Cr2O3系スラグと溶融銅の平衡実験が行われ、溶融銅中クロムの活量係数、CaO+ CaCr2O4二固相共存領域およびCaSiO3+ SiO2+Ca3Cr2Si3O12 三固相共存領域でのCr2O3活量が高い精度で決定された。なお、得られた結果はXRD測定で検証された。また、この測定値を用いてCaCr2O4およびCa3Cr2Si3O12の生成Gibbsエネルギー変化を算出した。以上の結果を用いて、全ての三相共存領域でのCaO、SiO2、Cr2O3の各酸化物の活量値を求めている。
今後、以上の精緻な実験で得られた基礎的な物性値を計算熱力学へ適用することで製造現場への適用性向上が期待される。このように、本論文は学術上、技術上の両面において非常に価値があり、澤村論文賞にふさわしい論文であると判断できる。
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- A Modified Random Sampling Method Using Unidirectionally Solidified Specimen: Solute Partition Coefficients in Fe–Cr–Ni– Mo–Cu Alloys
ISIJ International, Vol.61 (2021), No.6, pp.1879-1888
小林祐介(日本冶金, 京都大), 轟 秀和(日本冶金), 中野敬太, 鳴海大翔, 安田秀幸(京都大)
https://doi.org/10.2355/isijinternational.ISIJINT-2020-775
過酷な腐食環境下での使用が期されるFe-Cr-Ni-Mo-Cu 合金は、世界的な環境保護意識の高まりにより需要が増えているが、鋳造性、熱間加工性および溶接性を大きく影響する凝固時の成分偏析の調査は限られている。本論文は、固液間分配係数の評価方法として、凝固開始から完了までの組織と組成が凍結できる一方向凝固実験に着目し、凝固末期(固相率=0.9~1)に相当する位置で測定した多数の濃度データのランダムサンプリング法による整理により、デンドライト軸心から樹間までのFe-Cr-Ni-Mo-Cu 分配係数の算出を行うとともに、放射光X 線(SPring-8)その場測定と同等の精度で分配係数が評価できることを明らかにしている。今後、他の高合金系の偏析挙動を明らかにする手法の指針をも示しており、本研究成果は、今後の合金創製プロセス技術に寄与するのみならず、学術的にも優れたものであり、澤村論文賞にふさわしい論文と判断できる。
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- Diffusion Behavior of Al in Zn Coating Layer of Zn-0.2mass%Al Hot-dip Galvanized Steel Sheets with and without Temper Rolling during Aging after Production
ISIJ International, Vol.61 (2021), No.8, pp.2264-2273
星野克弥(JFEスチール, 東北大), 及川勝成(東北大), 奥村友輔, 平 章一郎(JFEスチール)
https://doi.org/10.2355/isijinternational.ISIJINT-2021-096
本論文は、自動車に使用される溶融Znめっき鋼板を対象とし、車体製造工程のプレス加工、溶接性、化成処理に大きな影響を及ぼすめっき皮膜のAl 系酸化物の形成機構を、皮膜内部の組織変化とAl 原子の拡散から考察したものである。これまで、めっき皮膜表面に形成するAl 系酸化物の形成機構は不明な点が多く残されていた。本論文では、溶融めっき鋼板に調質圧延を施し、38℃で保持することでAl 系酸化物の形成速度が最大となることを見出した。また、詳細な組織観察・元素分析の結果、Znめっき皮膜の組織変化(調質圧延ロールとの接触で生じるZn めっき層の再結晶と、保持温度により生じる結晶粒成長)が、Znめっき皮膜中の固溶Al 原子の表面への拡散を促進することを明らかにした。技術的には、自動車用表面処理鋼板の特性を制御する指針を示した点が高く評価される。また学術的には、調質圧延を利用したZnめっき皮膜の組織制御を通じて、Al 原子の拡散を促進することを示した点に新規性が認められる。
以上、本論文で得られた知見は、表面処理鋼板におけるZnめっき皮膜の組織制御による機能性向上の新たな可能性を示したものである。したがって、本論文は学術、技術面で高く評価でき、澤村論文賞にふさわしいと判断できる。
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- Experimental Measurements and Numerical Analysis of Al Deoxidation Equilibrium of Molten Fe–Cr–Ni Alloy
ISIJ International, Vol.61 (2021), No.9, pp.2331-2339
深谷 宏(日本製鋼所M&E), 中嶋成佳, Jonah GAMUTAN(東北大), 鈴木 茂, 梶川耕司(日本製鋼所M&E), 斉藤 研, 三木貴博(東北大)
https://doi.org/10.2355/isijinternational.ISIJINT-2020-710
高品質の鉄鋼材料製造に重要な溶鋼のAl脱酸プロセスは介在物-溶鋼-スラグ-耐火物間の相互反応に大きく影響され、鋼材品質確保と製鋼プロセス最適化を両立させるためにその正確な制御や予測は重要な課題である。以上の背景より、溶鉄のAl脱酸平衡に関して多くの研究が行われてきた。一方、ステンレス鋼に代表される高合金系溶鋼についてのAl脱酸平衡の報告は限られ、また、溶鋼組成の影響や精錬プロセスから凝固プロセスまでを包括する温度の影響に関する研究は不十分であった。
本論文は、幅広い組成範囲のFe-Cr-Ni系融体を対象としてAl脱酸平衡実験を行い、準正則溶体モデルとRedlich-Kister型多項式近似を用いた解析を実施した。脱酸平衡実験において高精度の結果を得るために種々の工夫が施され、さらに、得られた結果と信頼性の高い先行研究の熱力学データを活用して、測定結果を精度よく再現可能な三元相互作用パラメーターや高次項を含む新たな相互作用パラメーターを導出した。これらを用いて、幅広い組成範囲、かつ、精錬プロセスから凝固プロセスまで適用可能な広範な温度範囲でのAl脱酸平衡データを算出した。
高合金系鉄鋼材料の実溶製プロセスにおいて活用できるデータを示し、かつ、他成分系にも展開可能な熱力学解析手法を提示しており、学術と技術の双方の点から鉄鋼精錬プロセスの発展に寄与する優れた研究であり、澤村論文賞にふさわしい論文と判断できる。
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ギマラエス賞 該当なし
卓越論文賞(1件)
- Effect of Grain Size on Thermal and Mechanical Stability of Austenite in Metastable Austenitic Stainless Steel
ISIJ International, Vol.53 (2013), No.7, pp.1224-1230
松岡禎和(九州大), 岩崎竜也(新日鐵住金), 中田伸生, 土山聡宏, 高木節雄(九州大)
https://doi.org/10.2355/isijinternational.53.1224
超微細粒の準安定オーステナイト鋼では、結晶粒径と加工誘起マルテンサイト変態の関係はこれまで不明であった。また、TRIP鋼では、微細な残留オーステナイトを利用していることから、その機械的安定性と結晶粒径の関係を知ることは特性改善を検討する上でも極めて重要である。
本論文では、準安定オーステナイト鋼において、加工誘起マルテンサイト変態挙動とその結晶学的特徴を調査し、機械的安定性と結晶粒径の関係を明らかにした。非等温マルテンサイト変態は結晶粒径が20μm以下で顕著に抑制されたのに対し、引張試験中に生じる加工誘起マルテンサイト変態は結晶粒径に依存しなかった。非等温マルテンサイト変態では、粗大粒の場合、24のバリアントが生成するマルチバリアント変態が生じるのに対して、微細粒では、単一のバリアントが生成するシングルバリアント変態が生じて変態ひずみの緩和が困難となり、マルテンサイト変態が抑制されることを明らかにした。一方、加工誘起マルテンサイト変態では、粗大粒において、引張ひずみにより変態ひずみが緩和されるように特定のバリアントが選択され、微細粒と類似の変態様式になることから結晶粒径依存性が無くなることを明らかにした。
本論文は、オーステナイト鋼の熱的・機械的安定性を論ずる上で基盤となる知見を提供しており、本研究分野に有用な影響を長期的に与えている。したがって、卓越論文賞にふさわしいと判断される。
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